9月にはいり、厳しかった暑さも少しずつ和らいできました。
朝晩には少し肌寒さを感じたり、青々とした葉っぱが少しずつ色を変えてきたり、ちょっとしたところで秋の訪れを感じるようになりました。
そんな中でも、これぞ秋だと感じるのが赤とんぼ。
秋の夕暮れに、群れで飛び交う姿は今年も秋が来たことを教えてくれます。
童謡としても有名な赤とんぼですが、実は赤とんぼという名前のトンボはいないのです。
赤とんぼとは赤い色をしたトンボの総称です。一般的にはアキアカネ・ナツアカネといったアカネ属に含まれるトンボの事を指し、数十種類ものトンボが含まれます。
中でも最も有名なのがアキアカネ。
その名の通り、秋を彩るアキアカネですが、実は初夏にはすでに羽化しています。しかし暑さに弱いため、羽化した後夏の暑い時期は山へ避暑に行き、暑さが和らいだ秋頃に平地へ戻ってくるのです。
羽化したばかりの頃はまだ橙色だった体も、その頃には成熟し美しい赤色へと変化しています。
日本人とトンボの関係は、古来より続いてきました。稲を育てる水田や水路はトンボの住処となり、トンボたちは稲を荒らす害虫を食べてくれます。私たちの暮らしに欠かせない大切な存在だったのです。
そして、トンボが愛されてきた理由は、水田を守ってくれるからだけではありません。
トンボは「勝ち虫」と呼ばれる縁起物。まっすぐ前にしか進まない性質から、武士たちの間で「決して退かない」という意味を持つ象徴として好まれ、兜など武具の装飾に用いられていました。そして今もなお、家紋や和装の柄などに縁起の良いものとして描かれています。