こよみの学校

第213回 クリスマスシーズン アバウトなアドベント

エンゼルスの「6月のクリスマス」

テレビで大リーグ観戦をしていると、おどろいたことに大谷翔平選手のいるエンゼルスでは2022年6月24日、通常より半年も前にクリスマスを祝っていました。本拠地の球場には巨大なクリスマスツリーが立ち、「6月のクリスマス」と銘打ったイベントがおこなわれていました。記念品として先着の来場者2万5000人には「大谷スノーグローブ」が無料で配布されました。セットポジションの大谷投手に雪が降りかかるというアイデア製品のようでした。しかし、ネットではよくわからなかったので実物を入手してみました。するとそれは雪に見立てた無数の白い粒が水中をただよいながら沈んでいくという代物でした。そのためには置物を手に取って、上下左右に揺らして雪を拡散しなくてはなりません。落とせばガラスが割れて、水が飛び散ります。なので8歳以下の子どもは使用不可と箱には書いてありました。

ロックフェラーセンターのクリスマスツリー

クリスマスの季節を象徴するものの一つにクリスマスツリーがあります。アメリカでもっとも有名なものと言えば、ニューヨークのロックフェラ―センターに立てられる巨大な電飾ツリーをおいてほかにありません。公式には大恐慌時代の1933年に始まったとされ、感謝祭の翌週の水曜日から1月6日の公現祭まで点灯されます。2007年からは電飾にLEDが使われるようになりました。オープニングの点灯式はテレビで生中継され、本格的なクリスマスシーズンの到来を全米に告知しているかのようです。

アドベント(待降節)

キリスト教の教会暦ではクリスマスに先立ってアドベントとよばれる期間がもうけられています。カトリック教会では待降節とよばれ、11月30日の「聖アンデレの日」に最も近い日曜日からクリスマスイブまでの約4週間をさします。最も早い年では11月27日から、最も遅い年でも12月3日には始まります。

しかし、市販の子ども向けのアドベントカレンダーは12月1日から始まり24日のクリスマスイブで終わります(本コラム第21話「アドベントカレンダー―もういくつ寝るとお正月」参照)。そこには1から24までの数字=日付があり、その窓を開けると聖句や格言が書いてあったりします。チョコレートやキャンディーが入っている場合もあります。スタートが12月1日に固定されているので教会暦のアドベントとは期間が異なりますが、サンタクロースからのプレゼントを心待ちにする子どもたちにとってはこれがクリスマスシーズンと言えるでしょう。

ドイツのクリスマスマーケット

クリスマスマーケットの本場はドイツです。大都市だけでも2500を数えると言われ、通常11月の最終週から始まり、クリスマスイブに終わります。つまり教会暦にかなり忠実に合わせています。クリスマスマーケットは市庁舎や教会、あるいは旧宮殿のある広場に立ち、巨大なクリスマスツリーが飾られ、たくさんの屋台で埋め尽くされます。クリスマス用の手工芸品や装飾品が売られ、さまざまな食材が並びます。とりわけ地方色豊かなお菓子やグリュワイン(香料や砂糖入りのホットワイン)は欠かせません。お客はクリスマス・プレゼントを物色することも忘れてはいません。また、さまざまなアトラクションが用意されています。コンサートや演劇、サーカスやメリーゴーラウンドなど、老若男女を問わず楽しむことができます。

ミュンヘンの北西約70kmのところに位置するアウグスブルクでは1977年からエンゲルスシュピールとよばれる「天使の演奏」が始りました。そこでは天使の格好をした女の子たちが週末の夕べ、市庁舎のバルコニーに立って天使の歌声を聞かせてくれます。そればかりか市庁舎の窓自体がアドベントカレンダーに変身するという演出も見られます。

思い思いのクリスマスシーズン

半年前のクリスマスは例外としても、一般的には11月末からクリスマスシーズンは幕を開けます。しかし、期間はまちまちで教会暦に比較的忠実なドイツのような国もあれば、感謝祭の翌週の水曜日と決めているニューヨークのような都市もあります。1枚物のアドベントカレンダーのように1日から24日にこだわるシーズン設定も許されています。今ではフィンランドのサンタクロース村のように年がら年中サンタクロースが常駐している観光地すら出現しました。一糸乱れぬ統制はクリスマスにはふさわしくないのかもしれません。そもそも聖書にはキリストの誕生日は記されていないのですから。

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