こよみの学校

第181回 節分 ー124年ぶりに2月2日に

節分は立春の前日です。季節を分けるのがその意味です。したがって、本当は立夏、立秋、立冬の前日も節分なのですが、立春の時だけ「豆まきの日」として特別扱いされています。その理由は後で述べるとして、2021年にはもうひとつ、特別なことが加わります。なぜなら、明治30(1897)年以来、124年ぶりに2月2日になるからです。年によって、どうしてこのようなちがいがおこるのでしょうか。

なぜ日が変わるの?

現在、立春は太陽の黄経が315度になるときと定義されています。今年はそれが2月3日23時58分50秒前におきると計算されています。国立天文台が発表している「暦要項」は分の桁までなので、23時59分となっています。1分あまりという実に微妙な差で立春は2月3日となるのです。それにともない節分はその前日、2月2日にやってきます。

太陽の黄経とは黄道上の太陽と地球とを結んだ線の角度のことを指します(図参照)。黄道というのは地球から見て太陽が1年間に移動する楕円の軌跡のことです。春分の時を黄経0度とすると、夏至は黄経90度、秋分は黄経180度、冬至は黄経270度となり、立春はちょうど315度というわけです。

節分といえば、なぜ立春の前日だけ特別なのか。その理由は、節切りの新年が立春からはじまるからだとかんがえられます。また旧暦の月切りの新年も立春の前後にやってきます。そのため「年内立春」ということが時々おこります(本コラム第1回参照)。今年の旧正月(中国の春節)は西暦の2月12日ですので、まさに「年内立春」の年にあたります。しかも旧暦2021年は来年の1月31日に大晦日を迎えるので、立春のない「無春年」となります。

これからの節分はどうなるの?

今から37年前、1984年の節分は2月4日でした。1985年以降、36年間、節分はずっと2月3日と安定していました。しかし、これからは乱れます。2057年まで、4年毎に2月2日になります。翌2058年もまた2月2日です。2年続けて2月2日となります。その後、2月3日が2年続きます。2年、2年で2日と3日というパターンが2088年まで続きます。2089年からは2月2日の年が3年続き、2月3日の1年をはさんでまた3年間、2月2日となります。そうして21世紀の終わりを迎えます。

このことは二至二分(冬至・夏至、春分・秋分)にとって何を意味するのでしょうか。暦研究家の須賀隆氏によると、2020年から2055年までは、「立春と入れ替わりに夏至が6月21日に固定される期間」に入ると言います。これが今年から35年間続くわけです。そして2056年以降は二至二分のすべてがいわば不安定期に入り、世紀末に至ります。

日本の雑節「節分」

節分は中国伝来と思う人もいるかもしれません。たしかに邪気や悪鬼を払うという意味では中国的な観念を受け継いでいますが、ほとんど日本独自に発達した節日です。そのため、二十四節気や五節句など中国風の暦日とは区別して、彼岸や八十八夜などとともに雑節のひとつに数えられています。一般には「豆まき」で知られる行事は仏教的には追儺(ついな)とか鬼遣(おにやらい)とよばれ、宮中行事であったものが民間にも広がったものです。歳の数だけ豆をひろって食べるのは年取りの行事でもあったからです(本コラム第179回参照)

節分の日、家の入口に鰯(いわし)の頭を指した柊(ひいらぎ)の枝をさしておく風習もあります。それは鰯の悪臭と柊のとげで鬼を退散させるためです。「鰯の頭も信心から」ということわざはここに由来します。鰯の代わりに臭いのきついニンニクやネギをつかう地方もあります。

昨今では恵方巻にかぶりつく風習が全国に広まりました。スーパーやコンビニで太巻き寿司のいわゆる恵方巻を売るようになったのは1990年前後からです。ちなみに今年の恵方は「南南東」です。コロナ禍のさなか、厄除けの節分は重い意味をもちそうです。

【参考文献】
須賀隆「立春と二至二分の日付の推移」『日本暦学会』第27号、2020年、12-13頁。

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