こよみの学校

第178回 ビジネス界の日中友好カレンダー

国際交流基金の日中友好カレンダーについてはすでに紹介しましたが(第175回)、今回は民間企業のカレンダーをとおして日中友好をさぐってみたいと思います。

『中国国際図書貿易総公司』発行カレンダー(2008年)

まず、北京の中国国際図書貿易総公司というところが刊行した2008年のカレンダーを見てみましょう。国旗をシンボルに中日友好を謳っているカレンダーです。表紙をはじめ各月の写真はすべて中国園林(中国庭園)とありますが、どこの庭園なのかは明示されていません。中国人には説明が不要かもしれませんが、日本人にも場所が特定できるよう配慮をしてほしかったと思います。

月表を開くと右側は日本、左側は中国のカレンダーです。中国のほうには農暦の日付と二十四節気が掲載されているのに対し、日本のほうには文字情報がまったくありません。ただ、国民の祝日だけが赤の数字になっていて、日本人にはわかりますが、中国人には不可解でしょう。中国の祝日についても説明はありません。中国人なら当然知っているからいいようなものの、不親切さはぬぐえません。中日友好にどれほど役に立つのか、ほとんど理解しがたいカレンダーです。

『中国国際図書貿易総公司』発行カレンダー(2005年)

他方、おなじ中国国際図書貿易総公司がだした2005年のカレンダーは西藏風光(The Tibet Scene)と銘打っていて、チベットをとりあげています。こちらは中国語と英語の対応となっていて、写真の解説も要領よくなされています。蔵暦の暦日表記もチベット語の文字もありませんが、英語が加わることで国際的な貿易取引の関係者にはそれなりに好評だったかもしれません。

たとえば、1月と2月のふた月分の頁には、ポタラ宮の写真が添えてあります。吐蕃王朝にはじまる1300年の歴史を誇り、宮殿と城壁と寺院を兼ね備えた建物であって、世界文化遺産にも登録されていると解説されています。3年後の日中友好カレンダーがなぜ素っ気なくなったのか、不思議でなりません。

『大連偕楽園食品有限公司』発行カレンダー(2008年)

次に紹介するのは、日中の暦日を卓上カレンダー(2008年)の両面でそれなりに表現しているものです。発行元の大連偕楽園食品有限公司は千葉県の木戸泉酒造と提携している日本酒代理店のようです。表紙には商品がずらりとならび、月ごとの商品の組み合わせにも工夫を凝らしたあとがうかがえます。

背景の写真は4月の桜や5月の藤棚など季節を意識したものですが、五輪マークがあるのは同年が北京オリンピックの年だったからです。すこしおもしろいと感じたことは、「中国2008農暦戊子年」に対し「日本国2008平成二十年」となっていることです。つまり中国は西暦(中国では西紀)と農暦(太陰太陽暦)と干支の組み合わせなのに対し、日本は西暦と元号(年号)に特化していることでした。

さらにおもしろいと思ったのは、中国の月表には農暦と二十四節気が併記されているのに対し、日本のそれには六曜があてられていることでした。実は年号も六曜も中国起源ですが、中国では現在、それらをまったく使っていません。逆に、日本では干支年よりも元号、旧暦の日付よりも六曜のほうが幅をきかせています。そうした特徴が日中を対比することで浮かび上がってきました。

日本と中国、カレンダーの決まりは?

農暦がないと中国のこよみとは言えません。しかし、六曜がなくとも日本のカレンダーだと主張できます。むしろ、六曜のような暦注は正式には認められていないものです。また、旧暦も日本では法的に廃止されています。他方、中国では西紀と農暦は双方とも正式に採用されているのです。

いずれにしろ大連の酒屋さんの卓上カレンダーは中国人の顧客にも日本人の駐在員にも過不足なく使ってもらえそうです。日中友好にどれだけ貢献しているかはわかりませんが、すくなくとも中国で生活する日本人にはたいへん使い勝手の良いカレンダーではないでしょうか。なんとなれば国慶節や農暦のみならず、大安や仏滅も入っているのですから。

【参考文献】

中牧弘允「カレンダーに問う 日本の国際交流」(討論を含む)『Peace and Culture』9(1): 56-69、青山学院大学社会連携機構国際交流共同研究センター、2017年。

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