こよみの学校

第177回 国際協力機構のカレンダー 援助からカイゼンまで

国際協力機構とは?

国際協力機構(通称:JICA、ジャイカ)は外務省系の独立行政法人です。2002年に設立されましたが、それ以前は国際協力事業団とよばれていました。国際協力事業団は1974年に設立され、海外技術協力事業団(1962年設立)や海外移住事業団(1963年設立)を統合した組織でした。JICAは開発途上地域への経済および社会の開発などに寄与することを通じて、国際協力の促進ならびに国際経済社会の健全な発展に資することを目的としています。ODA(政府開発援助)や技術援助をはじめ、青年海外協力隊の派遣や開発途上国の研修員受け入れなどをおこなっています。

民博所蔵のJICAカレンダー

国立民族学博物館(民博)が所蔵するJICAカレンダーは2000年、2006年、2007年、2008年のものです。いずれも二つ折りの中綴じタイプで、テーマが毎年変わっています。また、海外で使用されるため、英語と日本語が併記されていました。

2000年のカレンダーは「Precious Time」、日本語では「永遠の一瞬」と訳されていました。直訳ではなく、センスの良さを感じます。

2006年はDear World とだけあり、JICAのロゴマークの隣に「よりよい明日を、世界の人々と/For a better tomorrow for all」と小さな文字で掲載していました。表紙の写真はアフリカのニジェールの大地に青年海外協力隊の女性隊員が植物を植え、現地の民族衣装をまとった女性がジョロで水をかけ、それを仲間の女性たちが見まもっているという場面です(標本番号H0273468)。

2007年のカレンダーは「A Brighter Tomorrow 輝ける未来へ」というテーマで世界各地の写真を載せています(標本番号H0273591)。

2008年のカレンダーの表紙にはJICAの字が大きく中央に陣取り、それに重なるように「The Environment 環境」の文字が乗り、JICAが支援する環境プロジェクトが紹介されています(標本番号H0273626)。

<「JICAカレンダー」資料はこちらからご覧いただけます>
https://htq.minpaku.ac.jp/databases/mo/mocat.html
※標本番号をご入力ください。

一変した体裁と内容

従来のJICAカレンダーは外務省カレンダーと判型が似ていました(本コラム第174回参照)。ところが、2017年のカレンダーを入手したところ、すべてが一変していることにおどろきました。まず、中綴じではなくなっていました。サイズも四六判の四つ切りで、ほぼ倍の大きさです。とはいっても、壁に掛ければおなじくらいのスペースをとります。表紙にテーマを掲げることは以前と同様ですが、英語のほかにフランス語とスペイン語が加わっていました。

絆 KIZUNA The partnership between JICA and your countries / Le partenariat entre la JICA et vos pays / La colaboración entre JICA y sus países(2017)

絆とは要するにJICAと貴国らとのパートナーシップ(協働)であることを謳っています。これは、ユネスコの公用語8カ国語とまではいかなくとも、「国際」の名に恥じないおおきな前進です。

また、月毎に写真付きで協力事業を紹介していますが、そこにも3ヵ国語で説明が添えられています。ただし、日本語の翻訳はありません(仮にわたしがつけてみました)。月別のラインアップは以下のとおりです。


1月 Sport for tomorrow(明日のスポーツ)

2月 Maternal and child health(母子の健康)

3月 Education(教育)

4月 Support for local police activities(地域の警備支援)

5月 Japan disaster relief teams(日本の災害救援チーム)

6月 Safe water for all(すべての人にとって安全な水)

7月 Training in Japan(日本での研修)

8月 SHEP(Small Horticulture Empowerment Promotion)(小規模農耕の振興)

9月 The ABE Initiative(安倍晋三首相が提案したアフリカの若者のための産業人材育成イニシアティチブの略称)

10月 Japan supports major traffic routes in Capital(日本は首都の主要交通ルートを支援する)

11月 KAIZEN(改善)

12月 Volunteers(ボランティア)

表紙の写真はカンボジアの翼橋(つばさブリッジ)です。2月の写真はアラビア語の母子健康ハンドブックをとりあげ、解説では30ヵ国以上で実践されていることが強調されています。5月は2015年に発生したネパールの震災時に緊急救援に従事したときの写真です。復興支援には犠牲者の救出をはじめ、テント、毛布、衣糧品の支給等が含まれると説明されています。11月は日本が得意とするカイゼンです。日本が戦後の復興に成功したのはカイゼンによるもので、カイゼンが開発途上国の経済を発展させると結んでいます。

【参考文献】

中牧弘允「カレンダーに問う 日本の国際交流」(討論を含む)『Peace and Culture』9(1):56-69、青山学院大学社会連携機構国際交流共同研究センター、2017年。

月ごとに見る
twitter
facebook
インスタグラム

ページトップ