こよみの学校

第175回 国際交流基金のカレンダー 日中友好と日伯友好

 

国際交流基金とは?

国際交流基金は外務省の特殊法人として1972年に設立されました。2003年に独立行政法人となりましたが、「日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむ」というミッションに変わりはなく、国際相互理解の増進につとめる組織です。より具体的には、「文化」(文化芸術交流)と「言語」(日本語教育)と「対話」(日本研究・知的交流)をつうじて日本と世界をつないでいる公的団体といえます。

わたしが入手できたカレンダーは日中交流センターのものとサンパウロ事務所が発行しているものです。日中交流センターは「文化」の部門に属し、日中の青少年交流を主たる目的として2006年に本部内に設立されました。サンパウロ事務所のほうは25の海外拠点のひとつで、南米では唯一です。

日中交流センターのカレンダー

日中交流センターは「心連心」つまり「心と心を結びあう」をモットーにかかげ、「中国高校生長期招聘事業」「ネットワークふれあい事業」「中国ふれあいの場事業」の3つを柱にすえています。「心連心」は英語のHeart to Heartとセットでロゴとなっていて、二つ折りカレンダーの表紙にはかならず印刷されています。このカレンダーの特徴はまず過去の活動記録が写真をとおして伝えられるという点です。楽しそうな顔、顔、顔であふれた頁は後輩たちにも元気をあたえているはずです。

もうひとつの特徴は祝日や二十四節気に関することです。日中の祝日は色分けして記載されていますが、中国に関しては2016年まで元旦、春節、清明節、端午節、中秋節、国慶節の5つが載っていました。中国の元旦とはグレゴリオ暦1月1日のことで、旧正月の元日のほうは春節と呼ばれるようになりました。清明節は二十四節気のひとつである清明の祭りです。端午節は旧暦の5月5日に祝われます。中秋節も旧暦8月15日の行事ですが、月餅がつきものです。国慶節はグレゴリオ暦10月1日の建国(1949年)を記念する日です。しかし、2017年からなぜか元旦と国慶節のみが記載されるだけで、他の祝日は消えてしまいました。旧暦にかかわる行事だからでしょうか。他方、二十四節気は変わることなく掲載されつづけています。

サンパウロ事務所のカレンダー

サンパウロ事務所のカレンダーには一枚ものと卓上用があります。しかし、いずれも日本語教室の生徒の描いた絵画が採用されていて、日伯の国際交流を知る手がかりをあたえてくれます。年によっては行事や料理、あるいはスポーツや「日本のここがクール」といったテーマに沿って自由に描かせています。コンクールで優秀な作品が12枚選ばれますが、最優秀賞を表彰する年もあります。2000年からこのカレンダーの作成がはじまり、2017年のものには、ブラジルの初中等教育のうち60機関、約5,350人が日本語を勉強していると記されています。

こよみの情報としては、日本とブラジルの国家祝日がそれぞれ日本語とポルトガル語ですべて載っています。月名のところではポルトガル語だけでなく、漢字もつかわれています。それだけではなく、普通のブラジルのカレンダーとくらべると決定的にちがう点がひとつあります。それは月齢のマークがないことです。ブラジルにかぎらずメキシコ以南のラテンアメリカでは新月、上弦、満月、下弦の4つの月齢マークがふつうに載っています。スペイン、ポルトガルでも、またスペインの統治下にあったフィリピンでも同様です。国際交流基金のカレンダーはそこまでは現地の文化に同化していないようです。「和して同ぜず」を意識しているのかどうかは定かではありません。

かつてジャカルタの日本センターでも東日本大震災後、一度だけカレンダーをつくったことがあるそうです。それはこどもたちの防災教育の絵を集めたものでしたが、目的は二つありました。ひとつはおなじ津波の被害をこうむった国として、たがいに元気をだして立ち上がろうというメッセージを発信することでした。もうひとつは防災教育が文化的な国際貢献であるとかんがえたからでした。ただし、実物はまだ入手できていません。

 

国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/index.html

 

【参考文献】

中牧弘允「カレンダーに問う 日本の国際交流」(討論を含む)『Peace and Culture』9(1): 56-69、青山学院大学社会連携機構国際交流共同研究センター、2017年。

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