今回はアメリカス(アメリカ大陸)で日系新宗教が信者向けに発行しているカレンダーを紹介することにしましょう。日本で誕生した新宗教のうち、海外でそれなりの教勢をほこっているのは創価学会、世界救世教、崇教真光、生長の家、PL教団、天理教、霊友会、立正佼成会などです。とくに最初の5つの教団は非日系人の信徒が9割以上を占めていることに特徴があります。他方、天理教、霊友会、立正佼成会は日系人がいまでも中心です。
日本の生長の家は31枚からなる万年日めくりを長年にわたって発行してきました。それは毎年更新され、会員がみずから使用するだけでなく、布教用にも活用されています。日本の日めくりをアメリカでは英語に、ブラジルではポルトガル語に、そしてペルーなどのスペイン語圏用にはスペイン語に翻訳して独自に発行しています。ただし、日本の前年の内容がそっくり踏襲されています。2006年の英語版では「1日」には初代総裁・谷口雅春の次のような言葉が採用されていました。
わが家(いえ)は「神の子」の住居(すまい)であり、「神の家(いえ)」である
My home is the dwelling of children of God and the Home of God.
その解説としては谷口雅春著『聖経版 真理の吟唱』から日本語の解説文が添えられていました。これはもっぱらアメリカ在住の日本人信徒向けで、英語訳は付いていませんでした。他方、ポルトガル語の2002年版の「1日」では次の文章が採択されていました。
Esqueça o passado e viva o agora.
(「過去を忘れ、現在を生きなさい」の意)
それにはポルトガル語の解説が付いているだけです。このようにアメリカとブラジルでは信徒構成が対照的であることが如実にわかります。
2006年版のブラジルPL教団の万年日めくりには壁掛けと卓上の二種類がありました。また日本語版とポルトガル語版があり、信者がつかうと同時に、友人や会社仲間、あるいは顧客に対するクリスマス・プレゼントになっていました。11月にはすでに発行され、3.50レアル(約210円)で販売されていました。10万部が印刷され、そのうち4万部が花で、6万部が虫の写真でした。ここでも日本の教団本部で作成したものをポルトガル語に翻訳していました。2002年版の日めくり第1日目は次の文言が採用されています。
世界平和はわれわれ次第と自覚しよう。
Conscientizemo-nos de que a Paz Mundial depende de cada um do nós.
教祖・教主の著作から引用しているわけではありませんでした。
2006年版の天理教カレンダーは天理教本部(天理市)の祭典写真が使用されていました。紙面トップには「真の自由は各自の心の誠にある」という標語があり、その下にAno169RDと見慣れない活字がならんでいました。これは立教169年の意で、RDはRevelação Divina(天啓)をあらわし、AD(キリスト生誕紀元)ならぬ教団独自の紀年法を使用していることにおどろきました。日付の下には赤でブラジルの祝日をかこみ、天理教の大祭には黄色をあて、ポルトガル語でその名称を記載しています。ブラジル風に月の満ち欠けの4つの印があり、下段の欄外には「『おぢばがえり』はツニブラでどうぞ」やJALなどの広告が載っています。
もう一点、制作年が不詳の万年日めくりがあります。「陽気日めくり」と称し、ブラジル伝道庁の写真を載せたひと月分の「日めくり」です。1日目のところをみると、「空から見たおやさと」の写真とともに聖典「おふでさき」の次の一節が日ポ両語で載っています。
月日にわ にんけんはじめかけたのわ よふきゆさんが みたいゆへから (おふでさき 14号25)
Tsukihi começou a criar os seres humanos por desejar ver o viver alegre e feliz. (Ofudesaki XIV-25)
「おふでさき」(11日分)以外には「みかぐらうた」(10日分)と「おさしづ」(10日分)から日ごとの文言がとられています。
新宗教のカレンダー(日めくり)の場合、とくに教えの浸透がはかられていることに第1の特徴があります。第2として、いずれも日本の本部との連携によって発行されていますが、イニシアティブは断然日本側にあり、アメリカス側は現地適応をはかるという役割をになっていることがあげられます。