こよみの学校

第164回 天赦日と一粒万倍日―最高の吉日

縁起の良い日

最近、占いの世界で縁起の良い日として人気をあつめている暦注がふたつあります。古くからあるものですが、天赦日(てんしゃにち、てんしゃび)と一粒万倍日(いちりゅうまんばいにち、いちりゅうまんばいび)です。ふつうのカレンダーには載っていませんが、高島易断はもとより、「開運」とか「幸福」を銘打った暦本にはかならず掲載されています。全国の有名な神社が頒布する小冊子の暦にもその暦注が見えます。仏教宗派でも曹洞宗の暦本にはその記載があります。ただし、伊勢の神宮司庁が発行する『神宮暦』には吉凶に関する暦注は一切載っていません。というのも、明治16(1882)年から頒布された『神宮暦』こそが太陽暦にもとづく公式の暦の伝統をひいているからです。

天赦日 てんしゃにち

天赦日は旧暦の暦注です。節切りの干支にもとづく選日で、春の最初の戊寅、夏の最初の甲午、秋の最初の戊申、冬の最初の甲子の日で、年4回の大吉日とされています(最初にこだわらない暦本もあり、その場合は年間5、6回となる)。節切りとは、立春からはじまり立夏の前日までを春とするような季節の区切りかたのことです。天赦の意味は天の生気が万物をいつくしみ、忌みはばかりを赦(ゆる)すことにあり、すべてに吉というわけです。『天寶暦』には「天之生育甲與戊、地之成立子、午、寅、申」とあり、天の生育は十干の甲と戊、地の成立は十二支の子、午、寅、申が組み合わさっていることがわかります。

一粒万倍日 いちりゅうまんばいび

一粒万倍日も旧暦の暦注ですが、「万倍」あるいは「万倍日」とのみ載ることも多かったようです。一粒の籾(もみ)が稲穂のように万倍にも増えるという吉日で、農家なら種まき、商家なら開店というように、何かをはじめるときに良い日です。したがって、お金を出すにも吉ですが、逆に借金をするのは凶となります。いまどきは宝くじを買うのに良い日とかいわれています。

一粒万倍日には節切りと月切りの選日があります。暦によって選日法が異なり、全国で統一されていたわけではありません。たとえば伊勢暦における節切りの月(節月)と十二支との組み合わせは次のようになっていました。節切りの正月とは立春(旧正月節)にはじまり啓蟄(旧二月節)の前日までをさしています。

次に、月切りの選日では以下のとおりになります。

一粒万倍日は貞享改暦以降、暦注からはずされていました。それが近年、どういうわけか復活してきているのです。しかも、現行の旧暦では次のように十二支が倍加しています。

これは天赦日とは比較にならないほど多く、年間(新暦)で60回前後になります。

吉凶をみる暦

日の吉凶といえば、明治16年以降、六曜(六輝)や三隣亡が少しずつに民間に浸透していきました(本コラム「こよみの学校」第36回第75回、参照)。正規の『神宮暦』とは別に、一枚刷りの略暦カレンダーなら民間でつくることが許されたからです。それで太平洋戦争後、一気に広まった暦注が六曜でした。六曜はいうまでもなく先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口の順に循環する吉凶の暦注です。

最近は、それと天赦日や一粒万倍日の吉日をかけあわせ、効果が倍増するなどと解釈するむきもあるようです。2020年には天赦日が大安と重なる日はありません。しかし、一粒万倍日と大安が一致する日は10回もあります。逆に天赦日でも一粒万倍日でも凶日と重なれば、効果は半減すると言われたりします。その凶日については、次回のトピックといたします。

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