こよみの学校

第158回 ミュージアム・カレンダー③ 国立民族学博物館

国立民族博物館のカレンダー

国立民族学博物館(通称、民博)は70年万博が開かれた千里万博公園のなかにあり、世界の諸民族の文化を展示しています。開館は1977年ですが、オリジナルカレンダーがつくられるようになったのは1997年の開館20周年が最初です。ミレニアムをひかえた1999年には、秋の特別展「越境する民族文化」に暦のコーナーがもうけられ、特別展図録の別冊としてカレンダーがつくられました。判型は横長のB5を縦に2.5㎝伸ばしたサイズで、絵画と月表をリングでつなぐ12枚綴じの壁掛けカレンダーでした。

その特別展では暦以外にもオーストラリア、カナダ、ボツワナ、アマゾンなどの越境する民族文化が紹介されました。そのため国際市場で売買される民族文化のアート作品がカレンダーにも採用されました。たとえば、オーストラリアの先住民アボリジナルは砂絵や点描画で知られていますが、描かれるモチーフはドリーミングとよばれる神話的世界の出来事です。他方、カナダのイヌイットは滑石彫刻や版画を得意としています。しかも版画は、浮世絵の手法を平塚運一から学んだカナダ人ジェームス・ヒューストンの活動に由来しています。そしてボツワナからはカラハリ砂漠に暮らすサンの絵画が選ばれました。

絵画の点数はアボリジナルのものが3点、イヌイットが4点、サンが6点となっています。合計が12点ではなく13点なのは展示期間と関連していました。なぜかと言うと、特別展は9月にはじまり、年をまたいで1月まで開催されたため、9月から12月分の月表を1頁におさめ、絵画も1点追加されたからです。

自宅でも楽しめる民博の展示

展示の会期に合わせたカレンダーづくりはその後の基本となりました。2019年版は前年の企画展「アーミッシュ・キルトを訪ねて」(2018年8月~12月)にあわせ、10月から12月分の月表を追加しています。その一方、2017年版は特別展「ビーズ」(2017年3月~6月)に対応し、同年に加え、2018年1月から3月の分を足しています。

しかしながら、2018年版のように戌年に合わせ、特別展や企画展とは関係なく、犬のモチーフを収蔵品にもとめた「みんぱく わん!だふる」のようなものもあります。そこでは玩具から土器や仮面までいろいろそろえています。変わり種としてはモザンビークの資料で、戦闘用銃器の廃棄部品からつくられた犬の造形作品がみられます。2014年版のカレンダーも展示とは無縁で、「植物と暮らす」がテーマでした。たとえば、メキシコはウィチョルの人びとに伝わる毛糸絵のサボテン(ペヨーテ)もあれば、東北地方のこけしに描かれた菊・なでしこ・梅などのさまざまな花模様もならんでいます。

民博オリジナルカレンダーの判型は2000年まではそれぞれでしたが、それ以降は二つ折り(中綴じ)を基本としています。サイズはずっとA4系の正方形(297mm×297mm)でしたが、2020年版は少し小型の正方形(250mm×250mm)に変更されました。その理由は、郵便料金の値上げにともなうもので、販売価格の値下げも同時にはかられました。

2020年のカレンダーは?

2020年版のカレンダーは目下開催中の特別展「驚異と怪異―想像界の生きものたち」(2019年11月26日まで)に合わせて作成され、2019年10月から12月までの3ヵ月分が含まれています。月表の暦注は国民の祝日しかのせないシンプルなものですが、ひとつだけ注目に値する点があります。それは2019年10月22日です。22が赤字で、その下に赤で「即位礼正殿の儀」と印字されています。2019年の通常のカレンダーは22の数字は、黒字にしろ白抜きにしろ、週日の色に合わせ、その下に赤で「即位礼正殿の儀」と記しているからです。

即位礼正殿の儀がおこなわれる10月22日を祝日とする法律は年末の2018年12月14日に公布・施行されました。大多数のカレンダーは22の数字を赤にすることができませんでした。しかし、民博カレンダーのように2020年版に2019年の10月を付けた場合にはそれが可能になったということです。展示の開始日(2019年8月29日)に発行を合わせた結果、このような世にもめずらしい組み合わせとなったのです。

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