こよみの学校

第157回 ミュージアム・カレンダー② 奈良国立博物館

奈良国立博物館「正倉院展」

秋に行きたい奈良の観光スポットはどこでしょうか。ネットおすすめの場所には奈良公園をトップに東大寺、興福寺、平城宮跡、薬師寺、法隆寺、信貴山、葛城高原、曽爾高原などがリストアップされています。奈良公園の名物のひとつとして鹿の角切りへの言及も見られます。しかし、肝心なことを忘れてはいないでしょうか。奈良の秋に欠かせない風物詩の場所を。それは奈良公園に立地する奈良国立博物館(奈良博)で毎年開催される正倉院展です。

今年の正倉院展は10月26日(土)から11月14日(木)までひらかれます。71回目を数え、御即位記念と銘打っています。41件の宝物が展示され、そのうち4件は初出陣ならぬ初出陳だそうです。天皇陛下の即位を記念し、宝庫を代表する宝物としてならべられるものには「天平美人」で知られる鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)や紫檀金鈿柄香炉(したんきんでんのえごうろ)が含まれています。この両者は珠玉の名宝としてチラシにも画像が載っています。

正倉院模様と花暦のカレンダー

わたしの手元にある奈良博の12枚物の壁掛けカレンダーにもこのふたつは採用されています。表紙には「正倉院模様・花暦」とあり、平成25年(2013)に販売されたものです。表紙の正倉院模様は螺鈿紫檀琵琶(らでんしたんびわ)の背面を模したもので、花暦としては紅梅の絵が添えられています。これは1月(睦月)の絵柄の組み合わせとおなじです。

ちなみに1月から12月までの組み合わせは以下のとおりです。

   

<月> <正倉院模様> <花暦>
1月(睦月) 螺鈿紫檀琵琶・紅牙撥鏤撥 コウバイ
2月(如月) 赤地鴛鴦唐草文錦大幡脚瑞飾 サザンカ
3月(弥生) 紅牙撥鏤棋子・紺牙撥鏤棋子 モクレン
4月(卯月) 紫檀木画槽琵琶・花喰い鳥 ソメイヨシノ
5月(皐月) 平螺鈿背八角鏡 クサイチゴ
6月(水無月) 紅牙撥鏤尺 ヤマホタルブクロ
7月(文月) 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡 キンシバイ
8月(葉月) 螺鈿紫檀阮咸部分 ノハラアザミ
9月(長月) 瑇瑁螺鈿八角箱 トリカブト
10月(神無月) 鳥毛立女屏風 ツリフネソウ
11月(霜月) 紫檀金鈿柄香炉 サザンカ
12月(師走) 螺鈿紫檀五弦琵琶背面・正面 ニシキギ

カレンダーの鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)は六曲一隻のうちの第四扇を模したものです。「樹下美人図」の構図はペルシャで流行し唐を経て日本に伝えられました。ほんらい山鳥の羽毛が貼ってあったところから鳥毛立女と称されています。伝来品ではなく、わが国で描かれた屏風です。今年は20年ぶりに六扇がそろって出陳されます。他方、紫檀金鈿柄香炉(したんきんでんのえごうろ)は仏具の香炉ですが、紫檀の柄に金鈿をほどこした豪華なものです。

奈良博のカレンダーは宝物だけでなく、花暦をあしらって季節感をだそうとしています。そればかりか、地の色も1月・2月は濃いピンク、3月・4月は淡いピンクというように、2カ月毎に色合いを変えています。それも単に赤・青・黄・緑ではなく、蓬(よもぎ)色とか鼠(ねずみ)色、あるいは肌色といったような和名をもつもののようです。わたしにはそれを同定するセンスはありませんが、そこまで凝(こ)ったカレンダーもミュージアムなればこそかもしれません。

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