こよみの学校

第156回 ミュージアム・カレンダー① ―日本科学未来館

ミュージアム・カレンダー

日本科学未来館は宇宙飛行士の毛利衛さんが館長をつとめるミュージアムです。博物館や美術館はカレンダーの製作母体であることが洋の東西を問わず言えると思います。そこで、このシリーズの初回にえらんだのは日本科学未来館の巻物カレンダーです。なぜ巻物になっているかというと、地球の歴史46億年を365日の長さにおさめているからです。つまり、1月1日が46億年前であり、1億年は約8日であらわされ、現在は12月31日の24時という設定です。この長さ3m弱の巻物カレンダーには絵もついているので絵巻物と称してもまちがいではありません。ただし、英語の月名やアラビア数字をつかっているため、左から右に広げて見ていくので、ふつうの絵巻物とはひらく方向が逆となります。また、紙の外側に絵や文字が印刷されているので、内側に巻き込む従来の絵巻物とは異なっています。

46億年の歴史をおさめるカレンダー

1月 5日~6日:ジャイアント・インパクト。原始惑星のひとつが地球に衝突し、分裂したマグマの一部が月となる。 24日頃から:海洋の誕生。微惑星の衝突が減ってくると、地表の温度は下がり、たちこめていた水蒸気が強い酸性の雨となって降ってくる。

2月 9日から:青空の誕生。大気中のCO₂が海水に溶け込んだことで大気圧が低下し、空が晴れ上がった。19日から:プレートテクトニクスが働き出し、プレートが沈み込む海溝に沿って無数の湖上列島が噴煙を吐いた。23日から:生命の誕生。40億年前。

3月 初旬から:プレートテクトニクスの働きで、無数にあった島が衝突、合体を繰り返し、徐々に大きさを増していった。下旬から:深海底では熱水が噴き出し、バクテリアが活動を開始した。

4月 下旬:陸地は大きなかたまりとなっていった。

5月 中旬:陸地が大きくなるにつれ、プレートの運動が衰退し、最初の氷河期がおとずれた。29億年前。下旬:陸地は小大陸になった。

 

6月 初旬:磁場の発生。強い地球磁場の発生は、危険な宇宙線から生命を守るバリアとなった。そして、浅い海の底に、酸素発生型の光合成をするシアノバクテリアのコロニーが発生し、日光を利用して酸素の発生が盛んにおこなわれた。中旬:酸素は海中の溶けた鉄分と反応し、海底に酸化鉄の膨大な堆積物をつくった。下旬:酸素は大気中にも広がりはじめ、大気中の酸素の比率が急速に増えはじめた。他方、プレートの運動が弱まり、長い氷河期がはじまった。

7月 初旬から中旬:酸素の増加につれて、DNAを酸化からまもるために、二重の細胞膜をもつ生物が現れた。中旬:内側の細胞膜は細胞核となる。最古の真核生物クリパニアが登場した。下旬:光合成するシアノバクテリアを細胞内に取り込んだものは後に植物となる。大気中の酸素濃度が15%と、現在の約20%に近くなった。

8月 上旬:世界の大陸の80%以上が集まった(超大陸ヌーア)。中旬:超大陸ヌーアは分裂し、それぞれの大陸は互いに離れてゆく。下旬:離散した大陸は別の場所で再び集まり衝突し、新たな大陸を作り上げる。

9月 超大陸の生成、分裂、発散、合体、次の超大陸の生成という大きなサイクルが継続する。

10月 中旬:超大陸ロディニアが形成された。この頃に多細胞生物が出現した。下旬:超大陸ロディニアが再び分割をはじめた。

11月 上旬:海水がマントルに流れ込み、海水面が大きくさがり、陸地の面積が増え、海水が塩水となった。上旬~中旬:南太平洋に超大陸ゴンドワナランド誕生。史上最大の氷河期。多くの生命が絶滅。14日~17日:原生代ベンド紀。18日~24日:古生代カンブリア紀。捕食生物の出現。生物種の急増。24日~:オルドビス紀、シルル紀、デボン紀。オゾン層の形成。コケ類の発生。両生類の上陸。

 

12月 4日~8日:石炭紀。地上は大森林で覆われ、大形の昆虫が栄えた。超大陸パンゲア。8日~13日:ペルム紀。超大陸パンゲアが分裂し、火山活動が激化。酸欠状態で史上最大の大量絶滅。14日~15日:中世代三畳紀。16日~19日:ジュラ紀。20日~27日:白亜紀。巨大な隕石が地球に衝突。恐竜は絶滅し、哺乳類が繁栄をはじめた。1億年前。27日~31日:新生代第三紀。第四紀。31日に猿人。人類が宇宙へ。

 

地質年代を1年の月日で表示したカレンダーは地球の歴史を頭にたたき込むのに便利です。就活中の学生なら、最初の氷河期が訪れたのは5月中旬で、長い氷河期は6月下旬からはじまり、超氷河期は11月の中旬であると記憶するかもしれません。12月の13日は生物の大量絶滅がおこった、超縁起の悪い日とおぼえておくこともできます。また、春の彼岸過ぎに生命が誕生し、陸上生物の誕生は勤労感謝の日の直後と記憶しましょう。ジュラ紀と言えば恐竜ですが、恐竜の誕生は12月の中旬、その絶滅はクリスマス明けとなります。そして猿人は大晦日にならなければ出現せず、ホモ・サピエンスとなると23時49分だそうです。

人類の歴史を過大評価しそうなとき、このカレンダーは役に立ちそうです。

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