独活は晩春の季語です。たらの芽、蕗の薹など、春は苦みのあるものがご馳走。なかでも独活は苦みに加えて、大地の水をたっぷり吸い込んだしゃりしゃりした食感と独特の香気、三拍子揃った「春告げの味」です。独活は体内のナトリウムを排出し、血圧の上昇を抑えるカリウムが豊富。風邪の初期症状や神経痛、頭痛の痛みをやわらげる効果もあるようです。北海道から九州まで日本全国に自生し、古くから食用とされてきた日本原産種のひとつ。英語名もUDOです。
伸びすぎると食用に適さなくなるため、用をなさないもののたとえとして「独活の大木」は慣用句になっていますが、2メートル以上にのびる独活はそれだけ生命力が強い植物であることの証でもあります。室の中で真っ白な茎を延ばす姿は、まさにムーミン谷のにょろにょろのようです。どこか妖精めいていて春の浄化を象徴するかのような、清々しい食材です。
地下の室で育てる本格的な軟白栽培が始まったのは江戸後期、武蔵野近辺だったといわれており、現在も東京野菜のひとつとされる多摩地域の特産品で、群馬県や栃木県など関東周辺で栽培されています。武蔵野の関東ローム層は、強度のある地下の室を作るのに適していたからだそうです。江戸時代には「井荻うど」「吉祥寺うど」と呼ばれ、現在は「東京うど」として出荷されています。「東京うど」の規格は80センチと決められているそうです。
この季節にしか食べられない旬の味。苦みと香気をたっぷり味わって、鋭気を養いましょう。