高貴な花の装いそのままに、可憐な花びらを浮かべた菊酒には、
清廉な香りが宿る。

古くから、重陽の節句に長寿を祈って酌み交わされた菊の宴。

五節句のなかでも、最大陽数の九が重なることから、
重陽の日は特に重んじられたといいます。

古来、中国の故事にもとづいて伝わったとされる、
菊花酒の不老長寿ご利益。

季節を楽しむすべを知り得ていた貴族たちが、
優雅な宴へと昇華させたことが想像できます。

かつての趣に想いを馳せて、菊花祭が執り行われる、
京都の石清水八幡宮を訪れました。

神前に供えられた黄色の菊花には、
たなびく雲が掛かるかのように、
白い真綿が載せられていました。

平安時代、宮中の女性たちが、
重陽の前日に菊花へ真綿をかぶせて、
翌朝、真綿に染みた朝露で身を拭い、
変わらぬ若さと不老を祈願していたといいます。

いつしか「菊の着せ綿」という風習として、
民衆にも広まりました。

匂い立つ凛とした菊花の美しさには、いつの時代も変わらぬ、
女性たちの願いが映されているようです。

豊かな秋の実りへの感謝も尽きる事はありません。

黄金色に実った稲穂がまぶしい頃、夜長に味わう、秋のご馳走。

炊き立ての新米のご飯に、栗ご飯や松茸ご飯。

夕飯時がいっそう楽しみになるのは、
新物のサンマが食卓に並ぶ時かもしれません。

お酒はもちろん、旬のひやおろし。

すこし肌寒さも感じる夜には、身に染みる燗酒を。

秋の夜長の嬉しさを嚙みしめる日がしばらく続きそうです。

風流な名で親しまれるようになったのは、江戸時代に遡ります。冬にしぼったお酒を春先に一度火入れした後、大桶でじっくりとひと夏を越し、秋を迎える頃に、外の温度と同じくらいの「冷や」(※常温)のままおろした事からこの名が着きました。
日本酒で「冷や」と言うと、昔から常温の事を指します。
冷やされた「冷酒」として区別するようになったのは、冷蔵設備が整ってからのこと。
様々な温度帯によって味わいの違いを楽しめる日本酒の魅力を、秋の味覚とともに、存分に楽しみたいですね。

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