女の子たちが心躍る、雛祭りの季節がやってきました。我が家では、優美な立ち姿に、柔らかな表情がとても愛らしい京立雛がお目見えします。私は三姉妹なのですが、それぞれが生まれた時に、お雛様を三者三様に誂えてもらいました。纏う着物や表情も少しずつ違っていて、不思議と目鼻立ちが互いに似ている気がします。また、三人官女などのお連れの人形やひな壇など、華美な装飾はなく、とてもシンプルに一対の人形と桃の花だけを飾ります。今でも、それぞれが嫁入りした先で、桃の節句を祝うたび、両親への感謝を込めて、誇らしい晴れ姿を眺めています。
昔から、うちでの雛祭りは3月3日から一か月遅れの旧暦4月3日に飾り付けていました。これは京都ならではらしく、お内裏さまを向かって右側に飾るのも、古式の習わしによるものです。
桃の節句は、女の子の成長を祝う行事として、今では広く知られていますが、古来より、「上巳の節供」として、3月上旬の巳の日に草や紙などの人形に身の穢れを移し川に流したという中国の風習に由来しています。身代わりの人形を流す「流し雛」として、各地の行事で伝わっていますが、平安時代に、上巳の節供が宮中の「ひいな遊び」と結びき、雛祭りになったとされています。

さらに、古事記で邪鬼を追い払ったとされる桃には、霊力が宿るといわれ、古より神事にも珍重されてきました。また、桃の花が流れるところの水を飲んだところ、気力が満ち、300歳余りの長寿を迎えたという中国の故事にちなんで、桃の花を盃に浮かべた桃花酒が飲まれるようになりました。飲めば顔色麗しく、病を退けると伝わり、上巳の節句には、桃花酒が欠かせないものとなりました。

その後、江戸で大衆に大人気となった白酒が雛祭りの定番となり、甘酒も加わって、現代の桃花は愛でるものとしての印象が強くなりました。 愛らしい桃の花は、女の子にも、お雛様にもぴったりな可憐な花。ふんわりとした花弁の鮮やかな桃色は、大人への一歩を踏み出した力強さと艶やかさを秘めている気がします。 今年も、来る旧暦の桃の節句には、桃花酒を添えて、春を祝いたいと思います。

雛祭りに定番の白酒は、白い見た目からも、甘酒と混同されていることが多いようですが、その成分や製法は全く異なります。白酒は、みりんや焼酎などに蒸したもち米や米麹を仕込み、1ヶ月程熟成させた醪をすりつぶして造られたお酒のこと。江戸時代に、雛祭りに合わせて売り出された白酒が大衆に流行して、毎年の風物詩となりました。白酒にはアルコールが含まれているため、子どもたちには、麹から造ったノンアルコールの甘酒がおすすめ。お雛さまの前で、大人も子供も、晴れやかな一日をお祝いしたいですね。

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