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葛掘る
  • 蟋蟀(きりぎりす)
  • 神嘗祭(かんなめさい)
  • 金木犀(きんもくせい)

「葛引く」「葛根掘る」という言葉があります。夏の間に太く成長した葛の根を掘り始める季節です。生命力の強い自生の葛は、かつて飢饉の際の救荒植物として田畑の周りに植えられていたようです。栄養豊富な根には疲労回復効果があり、漢方薬の風邪薬、葛根湯としても知られています。葉には止血・解毒作用があり、虫刺されや傷の手当に使われていました。葛を日常的に刈り取ることで共生していましたが、繁殖力が強く、根を抜かないとどんどん広がり、樹木を枯らす原因になることから、近年では有害植物とみなされることが多くなってしまいました。夏の間、紫の可愛い花をごらんになった方も多いのではないでしょうか。秋の七草のひとつでもあり、万葉の時代から歌に詠まれてきた植物です。

ま葛延ふ夏野の繁くかく恋ひば まことわが命つねならめやも 万葉集

晩秋は葛だけでなく、茜などさまざまな薬草の根を掘ることから、「薬掘る」という季語があります。精製に手間ひまがかかる本葛は、希少品です。葛粉と同様に片栗粉は、ユリ科のカタクリの根、わらび粉はシダ科のわらびの根から採取していましたが、現在はほとんどがジャガイモの澱粉で代用されています。根を叩いて水に晒し、粉にする作業は、冬の極寒の中で行われます。

紅花や茜には浄血や保温作用があり、神経痛や婦人病に効くとされて、女性の腰巻きによく用いられてきました。多くの染料は薬としても用いられ、草木染めを肌につけることは、植物の精をかりて、身を守る術でもあったのだとおもいます。

蟋蟀
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草の実を摘まんとすれば木の実落つ 子規

旧暦では長月の満月を迎え、晩秋の趣がただよい始めました。1020日が秋の土用入り。急速に寒さが増して、冬に向かっているのを感じるこの頃です。

みどりなるひとつ草とぞ春は見し 秋はいろいろの花にぞありける(古今集)

晩秋は「草の穂」の季節。春には見分けがつかないようなみどりにしかみえなかったくさぐざが、それぞれに小さな花をつけて、風に揺られています。春は花、秋は花野が季語になります。秋のくさぐさの花は、近づいてよくみないと、咲いているのかどうかわからないほど小さく、可憐です。

何千、何万という小さな秋草が花をつけ、晩秋を迎えた今は、それぞれ小さな実や穂をつけて、種を飛ばすものもあれば、綿穂になって飛んでいくもの、動物や人間にくっついて運んでもらうものもあります。たくさんの草が懸命に次の世代へ命をつなぎ、枯れていく姿に、私たち日本人のこころは打ち震えます。「もののあはれ」は秋こそまされりとされてきたわけで、もっとも情趣あふれる季節は、長月の後半の欠けていく月、すなわち有明の月を詠んだ歌はことさら多く詠まれています。

長月の有明の月はありながら はかなく秋はすぎぬべらなり 紀貫之

さて、七十二候では「蟋蟀戸にありて鳴く」。虫の音のピークはとうに過ぎていますが、晩秋の寒さの中で弱々しく鳴いているこの頃の虫の音が、もっとも心に沁み入るものとなります。

きりぎりす夜寒になるを告げがほに 枕の元にきつつ鳴くなり 西行
秋ふかくなりにけらしなきりぎりす 床のあたりに声聞こゆなり花山院

このように蟋蟀には、寝床や枕とともに詠まれた和歌が多くあります。この「蟋蟀戸にありて鳴く」のルーツとおもわれるものが、中国最古の詩篇『詩経』に登場します。『詩経』は紀元前11〜6世紀頃に成立したと推測されていますので、相当に古いものです。農民の暮らしを詠ったもので「七月は野に在り、八月は軒下に在り、九月は戸に在り、十月は我が床の下に入る」という部分です。その後、杜甫や白居易の漢詩にも、夜寒になった頃、暖を求めて蟋蟀が家や寝床に近づくことを詠まれており、日本の和歌にも影響を与えてきたわけです。

こうしたことからも、なぜこの今の季節に、「蟋蟀戸に在り」という言葉が選ばれたのか、想像がつくのではないでしょうか。寒さの中でこごえているように鳴いている声を聴くと、なんとも切ない気持ちになりますし、こんなに遅く生まれてきて、ちゃんとお嫁さんがみつけられるだろうか、と心配にもなります。季節の味わいとは、その盛りのときよりも、ごくかすかな「兆し」であったり、終わりゆくものの「名残り」の中にあります。

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新米もまだ草の実の匂ひ哉 蕪村

稲刈りも終盤を迎え、新米が出回り始めました。伊勢神宮の神嘗祭(かんなめさい)は、その年の新穂を天照大神に奉納する重儀。装束や祭器のすべてを一新することから、神宮の正月ともいわれています。

神嘗祭はかつて旧暦の九月十七日に行われていました。改暦後しばらくは新暦の917日に行われていましたが、新穀の時期に合わせる必要が生じたため、明治12年以降は月遅れの1017日に行われるようになったようです。

神嘗祭は昭和22年まで、国民の祝祭日でもありました。一方、旧暦十一月の第二卯の日に行われていた新嘗祭は1123日に移行され、昭和23年以降には「勤労感謝の日」と改称されて、今日も祝日になっています。

昔の人々にとっては一年の労をねぎらい、収穫に感謝する重要な節目だったのではないでしょうか。第三次産業に携わる人が多くなった現代ですが、お米や食料を生産して下さっている方々に心から感謝を捧げ、食べ物を慈しむ日にしたいとおもいます。

ご存知の通り2013年は、大規模な神嘗祭といわれる20年に一度の式年遷宮と、60年に一度行われる出雲大社の大遷宮が重なる珍しい年。私の周囲でも多くの方が、伊勢神宮や出雲大社の儀式に参列されています。御白石持神事には人の友人がそれぞれのルートで参加されていました。

ところで遷宮は、貴重な建築技術や文化を継承するための智慧であり、世代を超えて樹齢数百年の森を保持することにもつながっています。社殿に使われていた柱は宇治橋の鳥居に用いられ、その後さらに周辺の摂社や地方の老朽化した神社の建て直しなどに再利用されていき、伐採後百年は使われる計算になるといいます。

「伊勢神宮の森に学ぶ 〜日本の持続可能型社会への提言〜」

写真提供 Tomo-B さん

金木犀(きんもくせい)
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花よりも先に、匂いで気づくことが多い金木犀。今年も、すでに気づいた方が多いのではないでしょうか。ひんやりとした秋の空にただよう、甘く優しい香り。思わず深呼吸したくなるような、素晴らしい季節です。

どこに咲いているのだろう、と必ず香りの主を探してしまいます。オレンジ色の小さな花は金木犀。白い花であれば、銀木犀です。しとしとと降る秋雨。雨上がりは一段と強く、香るように感じます。

この花が咲き始めると、急に肌寒さが増してきます。金木犀の開花期は2週間ほど。小さなオレンジ色の花が華やかに地面に散り始める頃には、セーターに袖を通すことになるでしょう。

木犀の昼は醒めたる香炉かな	嵐雪

「月夜に提灯」と同じく、天然の香りに勝るものはありません。我が家は斜め前のお家に金木犀の大木があり、窓を開ける度に、ふわ〜っと香りが入ってきますので、なるべく窓をあけておきたくなります。

旧暦では長月に入りました。栗や秋刀魚のおいしい季節ですね。柿の実も色づいてきました。

和暦コラムは今回で最終回です。新しいコラムが115日から始まりますので、お楽しみに!

次回配信まで、こちらもあわせてお楽しみください。

二十四節気と七十二候

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