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国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉
教授。吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営
人類学。

「春雨じゃ、濡れてまいろう」は月形半平太の有名なせりふです。「月様、雨が」と言う京の芸子に、 一緒に濡れていくのもまた風情と洒落こんだのが半平太。モデルは坂本龍馬の僚友・武智半平太だといわれています。

イギリスの春雨はエイプリル・シャワーと言います。さらさらと降る雨で、すぐに止みます。傘などさす必要がないほどです。「濡れてまいろう」です。 実際、イギリス人は傘など持ち歩きません。その雨のおかげで5月には花が咲くといわれています。それをあらわすのが次のような表現です。
March winds and April showers bring forth May flowers.
3月の風と4月の雨が5月の花をもたらす。
たくみに春の季節の推移をとらえていますね。本当はエイプリル(4月)というのはラテン語で開花を意味する言葉なのですが。

他方、インドや東南アジアではこの時期、雨はあまり降りません。モンスーン地帯では6月からの雨季を前に乾燥した灼熱の日々がつづきます。 そこでは雨の代わりに「水かけ祭り」が繰り広げられます。もっとも有名なのはインドのホーリーです。 ヒンドゥー暦12月の満月の翌日におこなわれるのですが、西暦ではふつう3月にあたります。 色粉や色水をかけあって大騒ぎをするようです。もともとは豊穣を祝う祭りとされていますが、悪魔祓いの意味もあるようです。

東南アジアや雲南の少数民族(タイ族)のあいだでは民族の新年をお祝いする「水かけ祭り」がくりひろげられます。 タイではソンクランといって4月の中旬(13日から15日のタイ人の正月)に観光客であろうが、誰であろうが、水を浴びせかけます。 もともと仏さまや年長者に少量の水をかけて清める意味をもっていましたが、いまでは無礼講的な掛け合いのほうに関心が移っているようです。 ミャンマーでも同時期にティンジャンという同様の水かけがおこなわれます。タイでもミャンマーでも「命の水」(eau-de-vie)であるアルコール飲料もこのときとばかりに飲むので、 喧嘩や交通事故が多発し、社会問題となっているようです。

春雨も「所変われば品変わる」のたとえのとおり、土地がちがえば風俗習慣も異なるようです。