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夏至の食べ物-和食レストラン「こよみ」

今回は夏至の食べ物について学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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本コラム第52回で「こよみ」と名のつくレストランのひとつとして紹介した大阪府守口市のホテル・アゴーラの和食店に行ってきました。ちょうど夏至の日にあたっていましたので、店頭には夏至(二十四節気の一つ)の食材が展示されていました。それは愛媛県産のヤング・コーンでした。そして前菜にヤング・コーンが味噌とともに提供されました。

聞けば、直前の二十四節気である芒種(ぼうしゅ)の時は佐賀県産の青瓜(あおうり)であり、ほかの例としては石川県産の加賀太胡瓜(かがぶときゅうり)や沖縄の島人参の名があがってきました。加賀太胡瓜は直径が約6~7㎝で、大きなものは1kgにもなるそうです。「加賀野菜」のひとつで、1936年に篤農家が東北の短太系胡瓜の種子を譲り受けて栽培したものです。それが地元の節成りキュウリとの自然交雑によって現在のものになったようです。他方、沖縄の島人参のほうは「黄色い大根」を意味するチデーグニと呼ばれ、根の長さが30~40センチにもなる細長い人参です。甘味があり、香りが強いのも特徴としてあげられています。このように日本各地の名産野菜を二十四節気に取り上げていますが、「なにわの伝統野菜」のひとつである守口大根は1月から2月にかけて使用しているそうです。もうひとつの吹田慈姑(くわい)については入手困難につき、ふつうの慈姑をおせち料理や正月料理にだしているとのことでした。

季節の料理としては水無月豆腐がでてきました。豆腐に小豆(あずき)をいれたもので、6月16日の嘉祥(かじょう)の日に食べるお菓子や京都の和菓子「水無月」と同様の発想―厄除け―からきています(本コラム第57回参照)。稚鮎(ちあゆ)の塩焼きや粽(ちまき)もあり、季節感あふれる料理を堪能しました。気が付けば、ホテル名のアゴーラはポルトガル語で「今」を意味します。まさに「旬」にふさわしい料理を心がけているのが日本料理「こよみ」でした。

ところで、日本には夏至の食べ物はあるのでしょうか。冬至のカボチャは有名ですが、夏至の食材はおもいあたりませんでした。すると夏至の日の夜、NHK総合テレビのニュース番組で関西のタコがとりあげられていました。関西では、タコの八本足のようにイネが深く根を張ることを祈願してタコを食べるのだそうです。京都府中郡(現在の京丹後市)には蚕豆飯(そらまめめし)を炊き、お神酒をそなえて田の神をまつるところがあるといいます。

欧米では夏至をはさんでミッドサマーの祭りがおこなわれます。火を焚く火祭りがおおいようですが、キリスト教では6月24日のヨハネの日と結びついています。キリスト教以前のケルトの習慣では、夜間、悪魔が跳梁(ちょうりょう)しないように火を焚くのだと解釈されています。

南半球のブラジルでは6月は冬至の季節です。サン・ジョアン(聖ヨハネ)の祭りには花火や焚火がつきものですが、北東部地方はトウモロコシの収穫期にあたっているため、食卓はカンジカとかパモーニャというトウモロコシ料理でにぎわいます。コーンとミルク、あるいはココナツ・ミルクを使った独特の料理です。また、トウモロコシを煮てバターをつけて食べることも一般的です。

夏至のあと、たまたま行ったフレンチ・レストランでも皮付きのヤング・コーンがでてきました。地球の南北で―日本とブラジルだけですが―コーンが夏至(冬至)の時期の食材として注目を集めているようです。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト