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今回は山の日のルーツについて学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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インドでの自分と黒分

インドには月と月の宿る恒星との関係だけによる星占いと、誕生時の惑星の配置によるホロスコープ占星術の二つがあります。前者が古くインド起源であるのに対し、後者はギリシャ由来のヘレニズム文化の産物です。ここではホロスコープをとりあげたいと思います。

インド人は「どの星のもとに生まれたか」によって結婚相手を選んだり、将来を占ったりします。ホロスコープ(占星表)はギリシャ語の「ホーラを見るもの」「ホーラにおいて見られるもの」に由来します。ホーラとは英語のhour(1時間)の語源でもあり、空間の15度(360度の24分の1)=時間の1時間(24時間の24分の1)に相当します。

イラスト1
ギリシャとインドの違い

ホロスコープ占星術では黄道十二宮(第103回参照)とともにグラハとよばれる惑星が重要な役割を果たします。惑星と言っても現代天文学の惑星ではありません。古代インドでは太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星のことを指します。さらにラーフとケートゥが加わります。日月食を起こす一つの魔物(龍)の頭と尾というかたちでグラハに昇格しました。こうして9つのグラハ(九星神)という観念が定着し、それが中国に伝播しました。中国ではグラハは「執」と訳され、唐の時代には『九執暦』というインド系の天文学書が刊行されました。さらに、日本にも空海によって密教占星術が伝えられました。

ちなみに、空海は恵果から密教を学びましたが、恵果の師はインド僧の不空でした。不空は仏教の経典とともにインド占星術を中国に伝え、『宿曜経(すくようきょう)』として翻訳させました。宿曜は27の星宿と七曜の組み合わせからできています。七曜は日月火水木金土です。日曜を密・密曜とも記していますが、中央アジアのソグド語の混入です。ただし、七曜は今日のような曜日ではなく、あくまでもホロスコープ占星術の7つの惑星を意味していました。

イラスト1
ギリシャとインドの違い

さて、九星神はヒンドゥー寺院では縦横3列に配置されています。参拝者はこのまわりを時計まわりに3回まわって礼拝します。そして、この九星神は十二位の間を動きます。「位」とは密教占星術の用語で、インドではグリハ(家)を意味します。黄道が東の地平線と交わるところを出発点として、12に分割したものです。つまり九星神と十二位との関係が占いでは人の一生を左右するのです。

インドではとくに子どもの生まれた刻限の九星神と十二位の位置関係が重要です。7つの惑星と十二位の吉凶の関係は次の図のとおりです。〇は吉、△は中庸、あとは凶です。

イラスト3

インドでは新聞の求人欄に結婚相手を求めるものが多いそうです。地域や宗教やカーストによる分類に加え、「ホロスコープを送られたし」という文言が多数入っているようです。たとえば、「火星の生まれ」を意味するマンガリクという項目があり、一般には結婚相手として避けられるのですが、マンガリク同士であれば大いなる幸福をもたらすとされています。昨今ではコンピューター占いが大流行しているようで、個人のホロスコープが簡単にプリントアウトされるような時代になりました。日本同様、科学技術は進歩しても個人の運命を判断する占いはすたれることはないようです。

【参考文献】
岡田芳朗『アジアの暦』大修館書店、2002年。
杉本良男「南アジア・東南アジアの暦」岡田芳朗ほか編『暦の大事典』朝倉書店、2014年。
矢野道雄『占星術師たちのインド―暦と占いの文化』中公新書、1992年。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。
著書に本コラムの2年分をまとめた『ひろちか先生に学ぶこよみの学校』(つくばね舎,2015)ほか多数。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト