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今回は山の日のルーツについて学んでみましょう! こよみの博士ひろちか先生
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インドでの自分と黒分

先回はインドの暦法における白分と黒分についてとりあげました。それは月齢にかかわることでしたが、インドにはもうひとつ、余日(よじつ)と欠日(けつじつ)というやはり月齢に関連する暦法があります。余日とは同じ日を2回繰り返すことで、欠日とは1日飛び越えて翌々日になる現象を指しています。たとえば、3日の翌日も3日というのが余日であり、3日の翌日が5日というのが欠日です。どうしてこんな不思議なことがおきるのでしょうか。

インドでは日の単位をティティと言います。これは朔望月(太陽暦では29.53日)を30等分した単位です。白分の初日から15日続き、黒分の初日から15日でひと月は終わります。最後の日はかならず30日です。29日という日付で終わることをしないのです。そのため、太陰暦の朔望月と太陽暦の30日では半日のズレがあるので、ややこしいことになります。

イラスト1

インドの太陽暦では暦日は日の出からはじまり次の日の出で終わります。他方、太陰暦のティティは太陽暦に換算すると0.98日(29.53÷30)です。そうなると日の出のときにティティは次第にズレていきます。ある時は日の出をすぎてもティティが同じこともあれば、日の出前にティティのはじまりが2回くることもあります。そして前者が余日、後者が欠日となります。これは毎月のようにおこり、1回のときもあれば3回、4回のときもあり、こうして太陰暦と太陽暦とのバランスをとっているのです。

インドの余日、欠日はネパールのビクラム暦にもみられ、チベット暦にも継承されています。モンゴルでもチベット暦を使っていますので、余日、欠日、白分、黒分の暦法が生活の一部となっています。しかし東南アジアでは白分と黒分の使用は一般的ですが、ティティのような暦法はなく、大の月と小の月で対応しています。

東南アジアでの自分と黒分
イラスト3

さて、余日と欠日の名称についてですが、北京のチベット仏教の寺院で購入した蔵暦には漢字で重日と欠日とありました。欠日は同一名称ですが、余日のほうは日が重なることろから重日と称しているのです。これはちょっとした混乱を招きかねません。というのも、中国や日本では3月3日や5月5日のように奇数(陽)が重なる日を重日(じゅうにち、じゅうび)と称したり、易学の影響を受けた暦注では陽が重なるという巳の日と陰が重なるという亥の日に重日を配したりしているからです。そして重日には吉事はいいが、凶事は避けるようにするのが慣習でした。ただし、吉事でも結婚式は再婚を意味するのでよくないとされました。同様に種まきや出家、治療や仏事も凶とされました。反対に、着初めや初入学には大吉というのが重日です。

イラスト3

さて、本題の余日と欠日に話題を戻しましょう。インドの暦では、余日がおこるような月にはかならず欠日が生じるため、ひと月の日数は30日を越えることはありません。逆に、欠日が1日生じるだけの月があり、このときには余日はありません。このようにして、インドではひと月は30日という原則を守っているのです。

【参考文献】
杉本良男「南アジア・東南アジアの暦」岡田芳朗ほか編『暦の大事典』朝倉書店、2014年。
矢野道雄『占星術師たちのインド―暦と占いの文化』中公新書、1992年。

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日本カレンダー暦文化振興協会 理事長

中牧 弘允

国立民族学博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。
吹田市立博物館館長。専攻は宗教人類学・経営人類学。
著書に本コラムの2年分をまとめた『ひろちか先生に学ぶこよみの学校』(つくばね舎,2015)ほか多数。

中牧弘允 Webサイト
吹田市立博物館Webサイト