こよみの学校

第141回 在日外国人向けカレンダー④コリアン

在日コリアン向けのカレンダー

在日コリアン向けのカレンダーは大別して2種類あります。ひとつは戦前からの来住者、つまりオールドカマー向けのものであり、もうひとつは1980年代から増加したニューカマーを対象とするものです。くわえて、在日コリアンが日本人向けに発行したカレンダーもあるので、それもあわせて紹介したいと思います。

まず、北朝鮮南西部の海州出身の呉氏親戚会が発行したカレンダーでは、チェサとよばれる命日の祭祀を記したものが目を引きます。たとえば、日付の下に「明哲父」とあるのは呉明哲さんの父親の命日を意味しています。そうした命日の記載は蛍光色で印字され、年間24回にものぼります。いちいち親戚に命日を知らせる手間を省くため、年末にまとめてカレンダーをつくり、配るようになったのだそうです。そのせいか、チェサへの参加も増え、カレンダーが思わぬ結果をもたらしました。一般にオールドカマーのカレンダーにはチマチョゴリなどの民族衣装をまとった女性のモデルが多くつかわれています。ただし、旧暦については、ほんの一部が載っている程度です。ちなみに、済州島出身者で同郷の親睦会が発行するカレンダーもあります。こちらは地縁の絆の強さを物語っていますが、近年、作られなくなったと聞きました。

他方、ニューカマー向けのカレンダーは盛況のようです。たとえば、月刊Sunday Tokyoが制作した2005年のカレンダーを見ると、広告主は新宿のレストラン、食材店、引越し業者、中古品扱い店などです。ハングル・カレンダーであり、1990年代中頃から増加したエスニック・ビジネスを背景としています。2005年5月の調査では、新宿大久保地区のエスニック系施設は469件にのぼり、目立つのは飲食業、サービス業、食品・食材小売業です。韓国語が通じる病院や相談所などの情報もあります。またカレンダーには日韓両国の祝日はもとより、1日、10日、20日の旧暦表示もあって、留学生や会社員をはじめとするニューカマーにとっては韓国で使われている陰暦の情報が不可欠であることがわかります。カレンダーは現代の韓国とつながるメディアでもあるのです。

 

 

韓国文化・語学に親しむカレンダー

次に、在日本大韓民国青年会が2008年に発行したカレンダーを紹介しましょう。2005年より継続する事業で、社会貢献活動の一環として、韓国の文化と国際理解の向上に資することを目的としています。そのため表紙はもとより毎月の図柄には韓国の絵巻や屏風絵(びょうぶえ)などの場面が豊富に使われています。

装丁も綴(と)じ本のスタイルをとる凝(こ)ったものです。日付のいわゆる玉(たま)の部分に目を転じると、日本と韓国の休日(祝日)が色分けされ並立していることがわかります。しかも、それぞれ日本語とハングルで表記され、翻訳はなされていません。一方、玉のなかでは三段にわたって単語や文句が1年分おさまっています。中段にはハングルで単語が並び、上段にカタカナ読みが、下段には漢字かな交じりの日本語訳がのっています。たとえば元日は上段に「セヘボクマニバデゥセヨ」とあり、下段にはその訳として「明けましておめでとうございます」とあります。「さようなら」も「アンヨンヒ カセヨ」(送る時)と「アンニョンヒ ケセヨ」(出る時)といった具合に配慮のあとがみえます。単語の選択や配列にも工夫がみられ、毎日1単語ずつ覚えていけば、年末には相当の単語を習得することになります。

 

かつて、韓流ブームにのったカレンダーが新宿では高い人気を誇っていました。韓国製のものもあれば日本製のものもあり、ハングルと日本語が入りまじっていました。「冬のソナタ」のペ・ヨンジュンとチェ・ジウ、「宮廷女官チャングムの誓い」のイ・ヨンエらの写真が表紙を飾り、日付の部分にはスターの誕生日がマークされていました。なかでも圧倒的人気の「ヨン様」カレンダーのことが懐かしく思い起こされます。

 

【参考文献】

李仁子「在日コリアンのカレンダー」『国際交流』99号、2003年。

李仁子「絆を保つ在日コリアンの暦」『民博通信』No.109、2005年。

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